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リフィル処方箋、検討に消極的な施設も 改定効果検証調査
―交付を受けた経験がある患者は最も多い50代でも1割程度―
2023/04/21 17:00
3月22日の中央社会保険医療協議会・総会において、2022年度診療報酬改定の効果検証の一環として実施された、リフィル処方箋や後発医薬品の使用実態に関する調査の結果も報告された。リフィル処方箋の調査では、実際に交付を受けた患者が少なく、医療機関側の今後の発行見通しでも「患者希望があれば検討する」、「検討には消極的」といった回答が大勢を占めるなど、利用が順調に進んでいるとは言い難い現状が明らかになった。
リフィル処方箋は2022年度診療報酬改定の際に導入された。症状が安定しており、医師がリフィル処方箋の使用が可能と判断した患者については、3回を上限に同じ処方箋を繰り返し使うことができる。
調査は、医療機関、薬局、患者を対象に2022年12月~2023年1月に実施された。医療機関調査は、2022年4~6月の間のリフィル処方箋の発行実績の有無別でも集計を行った。
それによると医療機関調査で「リフィル処方箋を発行したことがある」と回答した施設の割合は、発行実績のある群では病院が32.1%、診療所が72.8%。発行実績のない群では病院が0.8%、診療所が33.3%だった。発行実績と回答にギャップがある理由について厚生労働省は、▽発行実績のある病院の割合が低いのは、回答者が管理者であるために自分以外の医師の発行状況まで把握できていない可能性がある▽発行実績がない診療所の割合が33.3%であるのは、2022年7月以降に発行を開始した可能性がある-と説明している(資料1)。
今後の発行見通しは「患者希望があれば検討」、「検討には消極的」が多数派
リフィル処方箋を発行しなかった理由で多かったのは、「長期処方で対応が可能だったから」、「患者からの求めがないから」など。今後の発行見通しでは、「患者希望があれば検討する」、「検討には消極的」との回答が、「積極的に検討する」を大きく上回った。特にリフィル処方箋の発行実績がなく、調査にも発行したことがないと答えた診療所では、「検討には消極的」が65.2%と過半数を占めた(資料2)(資料3)。
受診頻度の減少による重症化を懸念しているためとみられ、「検討には消極的」と回答した医療機関の多くが、「医師が患者の症状の変化に気付きにくくなるから」、「薬を処方する際には医師の判断が毎回必須と考えるから」をその理由に挙げた。
一方、患者調査でリフィル処方箋を交付されたことが「ある」と答えた割合は、最も高い50代でも11.0%にとどまった。リフィル処方箋について「制度の内容まで知っている」と答えた割合は、30代~50代が3~4割程度、60代~70代が1~2割程度で、患者の認知度の低さも課題であることがうかがえた。また、リフィル処方箋を利用するメリットでは「通院にかかる時間的負担(予約・移動・待ち時間)を減らせる」、「薬がほしいだけという患者の状況にあっている」という回答が、デメリットでは「医師に診てもらう機会が減ってしまう」、「処方箋を保管しておくことが手間である」という回答がそれぞれ上位になった(資料4)(資料5)。
(出典:厚生労働省 第542回中央社会保険医療協議会 資料より一部抜粋編集)
(参考) リフィル処方箋の運用について
リフィル処方箋は、慢性疾患を持つ患者が、継続して薬を服用する必要がある場合に使用される。リフィル処方箋を運用するには、以下のような手順が必要となる。
- 1. 患者が医師の診察を受け、薬の処方箋を受け取る。
- 2. 薬局に処方箋を提出する際に、リフィル処方箋である旨を伝達する。
- 3. 薬局はリフィル処方箋が有効期限内であるかどうかを確認し、患者に必要な量の薬を提供する。
- 4. 患者は定期的に薬局に行き、リフィル処方箋を提示して必要な量の薬を受け取る。
- 5. 有効期限が切れた場合は再度医師の診察を受け、新しい処方箋を受け取る必要がある。
リフィル処方箋は、慢性疾患を持つ患者にとって非常に便利な制度である。しかし、薬剤師や患者自身が有効期限を確認することが重要であり、有効期限が切れたリフィル処方箋を使用することは避ける必要がある。
今後リフィル処方箋に関して適切な運用フローの構築に向けて、さらに分析・議論が進むことが想定されるため、今後の審議の動向を注視していきたい。
(参考資料) リフィル処方箋の仕組み
(2023年4月5日時点の情報に基づき作成)
参考情報
厚生労働省 第542回中央社会保険医療協議会 資料
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