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診療報酬改定DXなどに関する議論を開始 中医協・総会

「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チームは4月4日から6日にかけて行った持ち回り審議で、「診療報酬改定DX対応方針(案)」を了承した。進化するデジタル技術を最大限に活用し、診療報酬改定に伴う医療機関等の負担を極小化することを「最終ゴール」に設定。その達成に向け、2024年度から全医療機関・薬局が共通で使える各種マスタやモジュールの開発・運用を段階的に進める。中央社会保険医療協議会で診療報酬改定の施行時期の後ろ倒しについて議論し、今年夏までに結論を得ることも決めた。

推進チームが了承した対応方針案によると、診療報酬DXでは、(1)共通算定モジュール(診療報酬の算定と患者の窓口負担計算を行う全国統一の共通的な電子計算プログラム)の開発・運用、(2)共通算定マスタ・コードの整備と電子点数表の改善、(3)診療計画書や同意書といった各種帳票の標準様式のアプリ化とデータ連携、(4)システム改修コストの低減や作業負荷を平準化するための診療報酬改定施行時期の後ろ倒し等-の4つのテーマに取り組む。DX化による財政効果も検証し、システムベンダ側で生じる負荷軽減効果については、運用保守経費等の軽減という経済的メリットとして医療機関・薬局に確実に還元するよう求める(資料1)。

(資料1)診療報酬改定DX対応方針(案)
出典:「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム(持ち回り開催)(第3回 4/6)《厚生労働省》
出典:「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム
(持ち回り開催)(第3回 4/6)《厚生労働省》

これらの取組の初年度となる24年度は、共通算定マスタの提供や電子点数表の改善、診療報酬改定施行時期後ろ倒しの検討(夏までに結論)を実施。25年度は共通算定モジュールの試行運用と改良を目的としたモデル事業を実施し、26年度から全国医療情報プラットフォームとも連携した共通算定モジュールの提供を開始する。その際には、導入効果が高いと考えられる中小規模の病院から提供を開始して徐々に対象を拡大するほか、医療機関の新設のタイミングやシステム更新時期に合わせて導入を促進することも検討する。





支払側からは薬価改定の施行時期は4月を維持すべきとの意見も

そして4月26日、中央社会保険医療協議会・総会は、医療DXについて議論した。その柱の一つである「診療報酬改定DX」では、診療報酬改定に伴うシステム改修コストの低減や作業負荷の平準化を図る狙いから、改定の施行時期の後ろ倒しについて総会で検討し、結論を得ることになっている。改定施行時期の後倒しについては複数の委員が、現場の混乱を避けるためには丁寧な議論や十分な説明・周知が不可欠だとの認識を表明。支払側からは、薬価改定の施行時期は現行の4月施行を維持するべきだとの意見が出た。

医療DXでは、保健・医療・介護に関わる情報を医療機関・薬局や行政、国民などの関係者がリアルタイムで共有・交換できるシステムの整備を通じて、医療の質の向上や国民自身による健康管理などの実現を目指す。

具体的には、基盤となるオンライン資格確認等システムに順次、必要な機能・情報を追加し、▽「全国医療情報プラットフォーム」の構築、▽電子カルテ情報を標準化し、医療機関・薬局での情報共有・閲覧を可能にする「電子カルテ情報交換サービス(仮称)」を構築、▽電子処方箋の導入促進、▽診療報酬改定に伴う医療機関等の業務負担やコスト負担の極小化を図る「診療報酬DX改定」の推進-などを実施。政府はこれらの施策に関する工程表を今春に策定・公表する方針を明らかにしている(資料2)。

(資料2)医療DXの方向性
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第543回 4/26)《厚生労働省》
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第543回 4/26)《厚生労働省》

厚生労働省はこの日の総会に医療DXに関する論点として、(1)全国医療情報プラットフォームの構築や電子カルテ情報の共有に向けて、標準規格化された3文書(診療情報提供書、退院時サマリー、健診結果報告書)とこれらに含まれる6情報(傷病名、検査情報、処方情報など)を普及促進し、医療の質向上のために役立てていくことをどう考えるか、(2)診療報酬改定DXにおける改定施行時期の後ろ倒しなどについて、財政影響や改定結果の検証期間などの総合的な観点からどう考えるか、(3)電子処方箋による薬剤情報の有効活用を通じて質の高い医療を提供するために、どのように対応していくべきか、(4)医療DXによる取組を診療報酬の中で評価することについてどう考えるか-などの5項目を提示した。





医療の提供に支障が出ないよう医療機関への十分な財政支援を 診療側・長島委員

引き続き行われた議論で、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、医療DX推進による医療の質向上に期待感を示したものの、「システムの導入・維持のために医療機関の業務や費用の負担が増し、医療の提供に支障を来すことになれば本末転倒だ」とも述べ、医療機関への財政支援を強く求めた。池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)も、電子処方箋導入に対する補助金の補助率と補助上限額の引き上げや、電子カルテ導入に対する支援制度の創設を要望。電子カルテの導入については、厚労省が医療情報化支援基金による補助の実施を検討中であることを明らかにした。

一方、診療報酬改定施行時期の後ろ倒しについて長島委員は、医療機関への影響や財政影響、改定効果の検証に影響を及ぼさない時期設定なども考慮しながら、慎重に議論を進める必要があると指摘。他の複数の委員も同様の見解を示した。





薬価改定の施行時期は現行の4月を堅持すべき 支払側・松本委員

これに対して支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、診療報酬本体と薬価を切り離して議論することを求めた。薬価は改定後の価格交渉に一定の期間を要することや、薬価改定以外にも年4回、新薬の薬価収載があることなどから、「4月施行を動かせば全体のバランスが崩れることになりかねない」と懸念。診療報酬改定の施行時期を後ろ倒しする場合も、薬価改定の施行時期は現行の4月を維持するべきだと主張した。

(2023年5月9日時点の情報に基づき作成)



参考情報
厚生労働省 第3回「医療DX令和ビジョン2030」資料




厚生労働省 第543回中央社会保険医療協議会 総会 資料



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