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長期収載品の選定療養化について議論 中医協・総会

長期収載品の使用を選定療養に位置付ける方向性を確認

中央社会保険医療協議会・総会は11月24日、DPC/PDPSの見直しや、長期収載品(後発医薬品のある先発医薬品)の保険給付範囲の見直しについて議論した。その中で、長期収載品の使用を選定療養に位置付け、後発品の薬価を超える費用の一部を患者負担とする方向性が確認された。後発品の薬価超過分を全て患者負担とする参照価格制度の導入には各側が揃って異議を唱えた。





選定負担の水準や除外基準などが論点に

そして12月1日、中央社会保険医療協議会・総会は、長期収載品の保険給付の見直しについて再度議論した。これまでの総会や社会保障審議会・医療保険部会の議論では、長期収載品の使用を選定療養とし、後発品の薬価を超える費用の一部を患者負担とする方針が確認されている(資料1)。この日は、選定療養として患者に追加負担を求める部分の水準や除外基準など、制度設定の詳細についてより踏み込んだ検討が行われた。

(資料1)長期収載品の保険給付の在り方の見直しに係る具体的な論点
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第569回 12/1)《厚生労働省》
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第569回 12/1)《厚生労働省》

選定療養は大きく、保険給付対象部分と患者から自由料金を徴収できる部分(選定負担)に分けられる。このうち患者が窓口で支払うのは、保険給付対象部分に対する定率負担(1~3割)と選定負担を合わせた額になる。選定負担については、例えば一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関を紹介状なしで受診した場合は7,000円以上というように、国が標準額を定めている。

長期収載品の使用を選定療養とする場合の患者負担水準を議論する際には、保険給付範囲に加え、選定負担としての費用徴収をどこまで認めるか検討する必要がある。厚労省は、▽国が定める標準額をどの程度に設定するか▽長期収載品の薬価を超えて選定負担を徴収することを認めるか▽選定負担を徴収しないことや、標準額より低い額での徴収を認めるか-をその際の論点として提示した。また、後発品は同一成分内に3つの価格帯が設定されており、このうちのどれを基準となる薬価に設定するのかも重要な論点になる。





長期収載品の選択で保険・選定療養が適用されるケースの場合分けを検討

このほか、(1)除外基準、(2)選定療養の対象にする長期収載品の範囲-についても意見を交わした。

(1)について厚労省は、▽処方の内容(銘柄別処方か一般名処方か)を問わず、後発品を調剤した場合は保険給付とする▽医師が変更不可として長期収載品を銘柄名処方し、その理由が医療上の必要性である場合には、長期収載品の保険給付を認める-ことを基本的な考え方として提示。その上で、▽患者の希望で医師が長期収載品を銘柄名処方した場合▽医師が一般名または後発品の銘柄名(変更可)で処方したにもかかわらず、調剤時の患者の希望で後発品を調剤した場合▽後発品の確保が難しく長期収載品を処方・調剤した場合-の取扱いを検討課題に位置付けた(資料2)。

(資料2)保険給付と選定療養の適用場面(イメージ)(院外処方の例)
保険給付と選定療養の適用場面(イメージ)(院外処方の例)
(資料3)長期収載品の薬価の改定ルール(イメージ)
長期収載品の薬価の改定ルール(イメージ)

出典:中央社会保険医療協議会 総会(第569回 12/1)《厚生労働省》



(2)では後発品への置換え率に応じて段階的に薬価を引き下げていく、長期収載品の薬価算定ルールとの関係性を考慮しつつ、後発品上市後の年数や後発品への置換え率などを軸に選定療養の対象になる長期収載品の範囲を検討することを求めた(資料3)。





後発品の基準薬価には最高薬価を選定すべきとの意見が大勢

各側からは様々な意見が出たが、▽患者負担の水準は負担増に配慮しながらも、後発品選択のインセンティブになる水準に設定すべき▽基準となる後発品の薬価は最高薬価とすることが望ましい▽患者の希望で長期収載品を処方・調剤する場合は選定療養とすべき▽後発品への置換えが一定程度進んだ長期収載品を選定療養の対象とすべき-といった点では概ね一致している。診療側は、今回の制度改正の対象から院内処方と入院を除外することも求めた。





調剤報酬について議論 中医協・総会



「特別調剤基本料」を引き下げる従来手法からの転換を提案 厚労省

中央社会保険医療協議会・総会は11月29日、調剤報酬について議論した。この中で厚生労働省は敷地内薬局への対応について、個々の薬局の調剤基本料を引き下げるこれまでの手法を改め、敷地内薬局を持つ薬局グループ全体に一律に低い調剤基本料を適用する案を提示した。

調剤報酬では、医療機関と不動産取引等で特別な関係にあり、処方箋集中率が70%超の薬局をいわゆる敷地内薬局と位置付け、これらの薬局では調剤基本料の中でも最も低い「特別調剤基本料」(7点)を算定する仕組みとなっている(資料4)。



(資料4)調剤基本料(令和4年改定時)
調剤基本料(令和4年改定時)
(資料5)特別調剤基本料を算定する薬局の推移
特別調剤基本料を算定する薬局の推移

出典:中央社会保険医療協議会 総会(第568回 11/29)《厚生労働省》



特定の医療機関に依存した経営を行う敷地内薬局が地域でかかりつけ薬剤師・薬局として機能するとは考え難いためで、累次の改定では「特別調剤基本料」の引き下げを通じて敷地内薬局への対応を強めてきた。

2022年度改定時にも9点から7点への引き下げを行ったが、改定前後の経営状況をみると、薬局の立地別では医療モール内や病院敷地内の薬局、調剤基本料別では「特別調剤基本料」を算定する薬局で改定後に損益率が上昇。しかも「特別調剤基本料」の算定薬局数はここ数年、年間100施設程度のペースで増加を続けており、従来の「特別調剤基本料」による締め付けは、敷地内薬局の経営や新規開設の抑制になんら影響を及ぼさなかったことが示唆された(資料5)。

また、大学病院や公的・公立病院の敷地内薬局の多くが、300店舗以上の特定の薬局グループに属している実態も明らかになっている。





対象グループでは敷地内薬局以外の薬局も一律に調剤基本料を引き下げ

そこで厚労省は、新たな対策として敷地内薬局を運営する薬局グループ全体の調剤基本料を一律に引き下げることを提案。具体的には、敷地内薬局の調剤基本料を通常の処方箋集中率などによる評価に変更した上で(結果として現行の「特別調剤基本料」から引き上がる)、敷地内薬局の開設実態に問題がある場合には、その薬局グループに属する全ての薬局の調剤基本料を一律に引き下げる。このため対象グループに属する薬局は敷地内薬局でなくとも調剤基本料が下がることになるが、その一方で一部の敷地内薬局は現行よりも高い調剤基本料の算定が可能になる。各側委員も厚労省案に概ね賛意を示した。

調剤ではこのほか、▽薬局の同一グループの店舗数、立地別、処方箋受付回数・処方箋集中率の区分別の収益状況等を踏まえた調剤基本料の見直し▽地域での健康づくりの取り組みや地域連携薬局の認定状況等を踏まえた「地域支援体制加算」(資料6)のあり方▽処方の状況や患者の状態等に応じてリスク管理計画に基づく患者向けの情報提供資材を活用するなど、メリハリをつけた服薬指導の評価-などが論点となっている。

(資料6)地域医療に貢献する薬局の評価
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第568回 11/29)《厚生労働省》
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第568回 11/29)《厚生労働省》

(2023年12月7日時点の情報に基づき作成)



参考情報
厚生労働省 第569回中央社会保険医療協議会 総会

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厚生労働省 第568回中央社会保険医療協議会 総会

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