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医薬品の安定供給や薬価の下支えについて議論 薬価専門部会

企業評価の薬価への反映、各側が評価指標の拡大等に賛同

中央社会保険医療協議会・薬価専門部会は11月6日、2025年度の薬価の中間年改定に向け、医薬品の安定供給や薬価を下支えする仕組みについて議論した。前者では、24年度改定時に試行的に導入された後発品企業の安定供給体制等の評価を薬価に反映させる仕組みについて、評価指標の拡大を図ることなどに各側が賛意を表明。後者では不採算品再算定の特例による供給状況の改善効果を疑問視する声が相次いだ。

24年度改定では、後発品企業の安定供給体制等をA~Cの3段階で評価し、薬価に反映させる仕組みを試行的に導入。A区分(上位20%)に該当した企業の品目のうち、安定確保医薬品A・Bに該当する場合など一定の条件を満たす品目については、該当品目だけの価格帯を別に設けることで、他の品目よりも高い薬価を維持できるようにした。その際、評価に用いる指標は後発品の供給実績や薬価の乖離状況などに限定し、安定供給に関する情報の公表や安定供給のための予備対応力の確保といった準備期間を要する指標の薬価上の取り扱いなどについては、改めて検討することになっていた。

また、供給不安を生む背景には少量多品目生産という後発品企業の産業構造上の課題があり、厚生労働省は今年8月末に公表した「近未来健康活躍社会戦略」で5年程度の集中改革期間を定め、構造改革を強力に進めていく方針を打ち出している(資料1)。

(資料1)後発医薬品の安定供給等を実現する産業構造改革
(資料1)後発医薬品の安定供給等を実現する産業構造改革

出典:中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第228回 11/6)《厚生労働省》を編集





少量多品目構造の見直しの視点を評価指標に追加することを提案 厚労省

こうした現状を踏まえ厚労省は、(1)継続課題(試行的導入の対象外)となっていた評価指標の活用方法とその適用時期、(2)評価結果の公表のあり方、(3)少量多品目構造の見直しについて薬価の観点から対応すべき点を評価指標に追加することの是非―を次期改定に向けた論点として部会に提示した。

(1)については支払・診療側とも25年度改定から薬価の評価に活用することに前向きな姿勢を見せた。(2)では診療側が、安定供給が確保できる企業を可視化し、それら企業の品目を医療現場で選択しやすくする制度本来の趣旨に沿うよう、企業名の公表を要請。

(3)では評価指標に追加する方向性への反対はなかったが、「少量多品目を一律に制限することには違和感がある。少量多品目とした上で、医療上の必要性があるのに単に収入が見込めないから撤退するなど、企業としての役割を果たしていない場合などとセットで検討するべきだ」(長島公之委員・日本医師会常任理事)、「まずはシミュレーションをした上で評価に加えることの妥当性を検討すべきだ」(松本真人委員・健康保険組合連合会理事)といった指摘があった。





24年度改定における不採算品再算定の特例、効果を疑問視する声相次ぐ

一方、薬価を下支えする仕組みでは不採算品再算定の特例の取り扱いが争点となった。24年度改定では、急激な原材料費の高騰や安定供給問題への対応として、企業から希望のあった品目を対象に不採算品再算定を特例的に適用。その際、成分規格が同一の類似品が全て不採算であることを求めるルールの適用も免除した。

改定前後の医薬品供給状況の変化を分析したデータによると(改定前から通常出荷だった品目は除く)、改定後に改善、またはやや改善した割合は、不採算品再算定適用品目が41.8%だったのに対して非適用品目は28.3%だった(資料2)。

(資料2)令和6年度不採算品再算定適用品目の供給状況に関する分析
(資料2)令和6年度不採算品再算定適用品目の供給状況に関する分析

出典:中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第228回 11/6)《厚生労働省》を編集

このため厚労省は特例に一定の効果があったとの見方を示したが、多くの委員は両者の差が10ポイント程度にとどまることや、適用品目の約6割で供給状況の改善がみられなかったことを問題視。「供給状況が改善されないのであれば不採算品再算定では対応できないということであり、薬価上の対応は真に効果があるものに限定するのが大前提だ」(長島委員)、「(分析データを見ると)特例によるポジティブな効果は限定的であり、特例の繰り返しによって本則の意義が薄れる可能性がある。原則に沿って粛々と対応すべきだ」(松本委員)など、厳しい意見が目立った。

(2024年11月12日時点の情報に基づき作成)



参考情報
厚生労働省 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第228回)

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