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2025/1/28 12:00
中医協が25年度薬価改定案を了承、過去の中間年改定とは異なる内容に
中央社会保険医療協議会・総会は1月15日、2025年度薬価改定に伴う薬価基準の見直案を了承した。今回は、▽改定対象範囲を医薬品のカテゴリー別にきめ細かく設定する▽「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」(新薬創出等加算)は加算だけでなく累積額控除も行う-など、過去の中間年改定とは異なる内容となった。以下、ポイントを整理する。
過去2回の中間年改定では、市場実勢価格と薬価の乖離率が平均乖離率の0.625倍を超える品目が一律に改定対象となった。今回の改定はこれを改め、医薬品カテゴリー別の役割や性格に着目。例えばイノベーションの評価や安定供給への配慮が必要な新薬創出等加算の対象品目や後発医薬品の改定対象範囲は狭く、逆に長期収載品は後発医薬品の使用促進の観点から広く設定される。
具体的には、▽新薬創出等加算の該当新薬、後発医薬品等/乖離率5.2%(平均乖離率の1.0倍)を超える品目▽新薬創出等加算の非該当新薬/乖離率3.9%(同0.75倍)を超える品目▽長期収載品/乖離率2.6%(同0.5倍)を超える品目―とする。
改定対象品目には全品目の53%に相当する9,320品目が該当。改定による薬剤費削減効果は25年度予算ベースで2,466億円と見込まれる。
インフルの急速拡大を受け、不採算品再算定の対象に急遽、解熱鎮痛剤等を追加
既収載医薬品の薬価算定ルールでは、新薬創出等加算の累積額控除を中間年改定で初めて実施。急激な原材料費の高騰や安定供給問題への対応として、不採算品再算定も特例的に適用する。対象は当初、(1)基礎的医薬品とされたものと組成・剤形区分が同一の品目、(2)安定確保医薬品のカテゴリーA・B該当品目、(3)厚生労働大臣が増産要請を行った品目(鎮咳・去痰薬)-としていたが、インフルエンザの急激な感染拡大を受け解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン等)と止血剤(トラネキサム酸)も加えることにした。
このうち(3)の該当品目については、組成・剤形区分・規格が同一の類似品が全て不採算であることなどを求めるルールの適用を免除する。
最低薬価のルールは適用にあたって、直近の物価や賃金上げの動向を参考に最低薬価をおよそ3%引き上げることになった。基礎的医薬品や既収載品の外国平均価格調整と薬価改定時の加算も適用する。薬価改定時の加算は21成分45品目が対象になる見通しだ。
企業評価を後発医薬品の薬価に反映する仕組みを全面導入
後発医薬品の価格帯集約も実施する。その際、24年度改定時に試行的に導入された企業評価の結果を薬価に反映させる仕組みを本格導入する。
これに伴って評価に用いる企業指標を拡充し、試行的導入では企業の準備期間を考慮して見送られた、▽後発医薬品の安定供給に関連する情報の公表等(製造販売する品目の製造業者名や原薬の製造国の公表、厚労省ウェブサイトへの安定供給体制等に関する情報の掲載等)▽後発医薬品の安定供給のための予備対応力の確保(原薬の製造所を複数確保、一定以上の余剰製造能力や在庫量の確保等)▽品目ごとの月単位の出荷実績の公表―の各指標を新たに適用。さらに同一成分内でのシェアが3%以下の品目割合を問う評価指標(30%を超えた場合は減点対象)も追加し、少量多品目構造の解消を後押しする。
26年度の次回薬価改定以降、企業評価の結果を厚労省HP等で公表へ
企業評価では評価指標の合計獲得ポイントに応じて後発医薬品企業をA〜Cの3区分に分類した上で、A区分(上位20%)の企業の品目の薬価が他社の品目よりも高くなるよう、通常の3価格帯とは別に当該企業の品目だけの価格帯を設ける。安定供給体制を確保した企業の品目が医療現場で選ばれるようにするための取り組みとして、26年度の次期薬価改定以降には各企業の評価(A〜C区分への該当状況)の厚労省ホームページ等での公表が予定されている。
なお、長期収載品の薬価の段階的引き下げ(Z2、G1・2等)や市場拡大再算定は今回の改定では適用しないこととなった。薬価改定の告示は3月上旬となる見通しだ。
(2025年1月15日時点の情報に基づき作成)
参考情報
厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第602回)
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