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電子処方箋、政府目標の未達が確実に 夏に新目標設定へ





25年3月の導入率、医療機関は1割弱にとどまる見込み

厚生労働省は電子処方箋について、2025年3月までに概ね全医療機関・薬局に普及させるとしていた政府目標の見直しを決め、1月24日の社会保障審議会・医療保険部会に報告した。目標未達が確実になったためで25年夏を目途に新たな目標設定を行う。

電子処方箋の運用開始施設(歯科診療所、薬局含む)は25年1月12日現在で4万7,681施設、導入率は22.5%。施設種類別の内訳は、病院311施設(導入率3.9%)、医科診療所8,172施設(9.9%)、歯科診療所1,010施設(1.7%)、薬局3万8,188施設(63.2%)-となっている。現在の導入実績が継続すると仮定した場合の目標期限の導入率は、薬局が約8割弱、医療機関は約1割弱にとどまる見通しだ。(資料1)

(資料1)電子処方箋の普及状況
(資料1)電子処方箋の普及状況

出典:社会保障審議会 医療保険部会(第192回 1/23)《厚生労働省》を編集

このうち薬局については25年夏頃に概ね全ての施設への導入が完了見込みであることから、厚労省はそのタイミングに合わせて新たな目標設定を行うことにした。それまでの間は、大きな課題である医療機関の導入率向上を目指し、▽未導入医療機関に対するフォローアップとして医療機関の規模、医科・歯科、診療科などのセグメントごとに導入阻害要因を分析し、その結果を踏まえた施策を検討する▽公的病院等への導入再要請、システムベンダーへの早期導入・開発要請、都道府県による導入支援策の実施など、さらなる導入支援策を講じる▽医療機関等における利活用状況や効果等の調査の実施-などの取り組みを進める。





「医療DX推進体制整備加算」の経過措置の取り扱いも課題に

24年度診療報酬改定では医療機関・薬局における医療DX推進の経済的インセンティブとして、「医療DX推進体制整備加算」が新設された。電子処方箋導入に関する施設基準の適用を猶予する経過措置は25年3月末で期限を迎える。現状のままでは医療機関を中心に加算の算定が困難になる施設が続出する可能性があり、中央社会保険医療協議会で経過措置の延長などが議論された。

同日の部会では、院内処方情報登録のプレ運用が1月23日から始まったことも報告された。院内処方機能の本格運用までの課題解決を目的としたもので、医療機関が院内処方等情報を問題なく電子処方箋管理サービスに登録でき、登録情報を他の医療機関・薬局で活用できるかどうかを主に検証する。





医療DX加算、医科は電子処方箋導入の有無で点数差
中医協が25年4月からの見直しを答申

さらに1月29日、中央社会保険医療協議会は、「医療DX推進体制整備加算」の見直しについて福岡資麿厚生労働大臣から諮問を受け、即日答申した。マイナ保険証利用率要件の基準値を引き上げるほか、医科は電子処方箋導入済み医療機関と未導入医療機関評価を区分。導入済み医療機関の評価を1~2点引き上げるのに対して、未導入医療機関は1点の引き下げまたは評価を据え置く。施行は25年4月1日。答申を受けて厚労省は2月中の告示・通達を目指す。





調剤は3区分を維持し、評価を2~3点引き上げ

その中で、調剤は25年3月末までに約8割弱の薬局で電子処方箋導入が見込まれることから、電子処方箋の導入を基本とした評価と位置付け、評価区分の細分化は行わない。見直し後の点数は「加算1」10点(現行7点)、「加算2」8点(6点)、「加算3」6点(4点)とし、紙の処方箋も含めた調剤情報登録の手間を考慮して2~3点引き上げる。

このほか、医薬品のマスタの適切な設定など安全な運用を担保する対策として、電子処方箋導入済み医療機関・薬局には今後、疑義解釈通知で厚労省が示すチェックリストを用いた点検の完了を求める予定。





マイナ保険証利用率の基準値は15~45%に引き上げ、小児科への配慮も

一方、25年4~9月に適用するマイナ保険証利用率要件の基準値は現行よりも引き上げ、「加算1・4」45%(現行30%)、「加算2・5」30%(20%)、「加算3・6」15%(10%)とする(医科・歯科・調剤共通)。その際、小児は顔認証がしづらく、マイナ保険証保有率も低い点などに配慮し、「加算3・6」については「小児科外来診療料」を算定し、かつ前年の延べ外来患者数に占める6歳未満の患者割合が3割以上の医療機関を対象に、基準値を12%に緩和する措置を設ける。

マイナ保険証利用率は、適用時期の3カ月前のレセプト件数ベースの利用率を用いることを原則とし、現行のオンライン資格確認件数ベースの利用率の使用も認める経過措置は廃止する。マイナ保険証利用率の基準値は3カ月ごとに実績に応じた見直しが行われており、25年10月以降の基準値は7月頃を目途に改めて検討・設定する。(資料2)

(資料2)医療DX推進体制整備加算の見直し
(資料2)医療DX推進体制整備加算の見直し

出典:中央社会保険医療協議会 総会(第603回 1/29)《厚生労働省》を編集

(2025年1月29日時点の情報に基づき作成)



参考情報
厚生労働省 第192回社会保障審議会医療保険部会

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厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第603回)

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  • ※上記内容は確定事項ではなく、今後の議論で修正や見送りになる可能性がある点にご留意ください。

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