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次期薬機法改正に向けて -薬局機能・薬剤師業務のあり方の見直し-





政府は2025年2月12日、薬機法の改正案を閣議決定した。これに先立ち、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会では、2024年4月以降、薬機法の施行状況を踏まえた制度のさらなる改善に向けた議論が重ねられ、その結果が2025年1月10日に「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」として公表されている。

2024年4月以降、同部会において、薬機法の施行状況を踏まえたさらなる制度改善に加え、人口構造の変化や技術革新等により新たに求められる対応を実現する観点から、医薬品等の品質確保及び安全対策の強化、品質の確保された医療用医薬品等の供給、ドラッグ・ラグやドラッグ・ロス解消に向けた創薬環境・規制環境の整備、薬局機能・薬剤師業務のあり方の見直し及び医薬品の適正使用の推進について議論が行われた。

薬機法改正に関するとりまとめの中から、「薬局機能・薬剤師業務のあり方の見直し及び医薬品の適正使用の推進」についてご紹介する。





基本的考え方

薬局・薬剤師について、少子高齢化の進展に伴い、医療需要が増大する中、対物業務の効率化により対人業務に注力できる環境の整備や地域における薬局機能の見直しを行う必要があるとしている。また、情報通信技術の進展も踏まえ、国民の安全性の確保を前提として、「要指導医薬品、一般用医薬品へのアクセスを進める」とともに、「濫用等の課題に対して迅速かつ適切に取り組む」必要があるとしている。





デジタル技術を活用した薬剤師等の遠隔管理による医薬品販売

近年のICT化の進展を受けて、対面と同等の情報収集や情報提供が可能となっており、人手不足の影響も考え、「薬剤師等が常駐しない店舗(受渡店舗)において、店舗に紐付いた薬局・店舗販売業(管理店舗)の薬剤師等による遠隔での管理の下、一般用医薬品を保管し、薬剤師等が映像及び音声による相談応需可能な環境下で購入者へ受け渡すことを可能とすべき」としている。

特に受渡店舗での対応のあり方や薬事監視に係る対応について検証していく必要があるとともに、当分の間は、管理店舗と受渡店舗は同一都道府県内とし、制度導入後の課題等の検証を踏まえてより広範囲での制度導入も含め、検討すべきとしている。





調剤業務の一部外部委託の制度化

薬局の薬剤師の対物業務の効率化を図り、対人業務にさらに注力できるようにするため、薬局の所在地の都道府県知事等の許可により、調剤業務の一部の委託を可能とすべきとしている。なお、調剤業務の一部を外部委託する場合は、患者への医薬品提供が遅れるなどの問題が生じないようにする及び、服薬指導等の対人業務が不十分にならないようにすることが必要となる。今後は、国家戦略特区の実証事業の状況も踏まえ、受託側と委託側の薬局における必要な基準を設定するとともに、両薬局の開設者及び管理薬剤師に係る義務や責任を法令上規定すべきとしている。





薬局の機能等のあり方の見直し

超高齢社会の進展を受けて、在宅患者への需要が増加しており、医薬品提供体制や健康・介護相談対応など地域において薬局に求められる役割・機能については、他の薬局、医療機関、行政機関等と連携して地域において体制を確保する必要がある。また、「地域連携薬局」及び「健康サポート薬局」について、「地域において役割・機能を中心的に担う薬局として明確化する」とともに、「地域住民がこれらの薬局を利用するメリットを認知できるようにする」必要があるとしている。

「地域連携薬局」については、居宅等における情報の提供及び薬学的知見に基づく管理・指導を主要な機能として位置付けるとともに、「健康サポート薬局」については、患者が継続して利用するために必要な機能及び個人の主体的な健康の保持増進への取組を積極的に支援する機能を有する薬局として、「都道府県知事の認定」を受けて機能を有する薬局であることを称することができることとすべきとしている。





薬局機能情報提供制度の見直し

薬局開設の許可権者は、都道府県知事、保健所設置市市長または特別区区長であるが、薬局機能情報提供制度における薬局に係る情報の報告先は都道府県知事となっていることから、円滑な運用を図るため、薬局機能情報提供制度の報告先に保健所設置市市長及び特別区区長を含めるべきとしている。 また、報告された情報の適切な活用のため、都道府県知事等から厚生労働大臣への報告義務及び厚生労働大臣による助言等の権限を新たに設けるべきとしている。





処方箋なしでの医療用医薬品の販売の原則禁止

近年、零売薬局が増加しており、ルールがあいまいなことから、処方箋医薬品以外の医薬品については、処方箋なしでの販売は禁止されておらず、通知により「要指導医薬品等の使用を考慮したにもかかわらずやむを得ず販売を行わざるを得ない場合に限る」とするにとどまっている。そこで、やむを得ない場合を明確にし、以下の2点のみ薬局での販売を認めるべきとしている。

(1)医師に処方され服用している医療用医薬品が不測の事態で患者の手元にない状況となり、かつ、診療を受けられない場合であって、一般用医薬品で代用できない場合

(2)社会情勢の影響による物流の停滞・混乱や疾病の急激な流行拡大に伴う需要の急増等により保健衛生が脅かされる事態となり、薬局において医療用医薬品を適切に販売することが国民の身体・生命・健康の保護に必要である場合等

やむを得ない場合の販売方法は、原則としてかかりつけ薬局または患者の状況を把握している薬局が対応することとするとともに、数量は必要最小限度とし、販売する際に当該患者の薬歴の確認や販売状況等の記録を必要とすべきとしている。なお、漢方薬・生薬については現場での販売に支障をきたさないよう適切な形での対応がなされるべきとしている。





要指導医薬品に係るオンライン服薬指導方法の追加等

要指導医薬品のオンライン服薬指導については、薬剤師の判断に基づき、オンライン服薬指導により必要な情報提供等を行った上で販売を可能とするとともに、医薬品の使用方法やリスクなどの特性を踏まえて適正使用のための必要事項等の確認について対面で行うことが適切である品目については、オンライン服薬指導による情報提供等のみにより販売可能な対象から除外できるようにすべきとしている。

なお、制度の運用に当たっては、オンライン服薬指導のみでの販売を不可とする例外の範囲や、要指導医薬品から一般用医薬品に移行しない場合の要件を明確化すべきとしている。





濫用等のおそれのある医薬品の販売方法の厳格化

若者を中心に風邪薬等の一般用医薬品の濫用が拡大しており、濫用防止に関する周知・啓発等の取組に加えて、薬事規制の側面からも、多量・頻回購入の防止を徹底する必要があるとしている。そこで、濫用等のおそれのある医薬品を販売する際、薬剤師等に、他の薬局等での購入の状況、必要な場合の氏名・年齢、 多量購入の場合の購入理由等必要な事項を確認させ、情報提供を行わせること等を義務付けるべきとしている。

<主な内容>
・20歳未満への大容量製品または複数個の販売を禁止する。・20歳未満への小容量製品の販売または20歳以上への大容量製品もしくは複数個の販売に際しては、対面またはオンラインでの販売を義務付ける。・商品の陳列については、顧客の手の届かない場所への商品陳列または販売もしくは情報提供を行う場所に継続的に専門家を配置し購入する医薬品と購入者の状況を適切に確認できる必要な体制を整備できる場合には、専門家が配置される当該場所から目の届く範囲(当該場所から7メートル以内)への陳列により対応する。





処方箋等の保存期間の見直し

現在、薬局開設者は、調剤済みの処方箋及び調剤録を3年間保存しなければならないこととなっているが、医師・歯科医師の診療録には5年間保存が義務付けられている。近年、電子処方箋の活用等により医療機関・薬局での情報共有を促進している中で、より効果的な情報共有を進める観点から、調剤済み処方箋及び調剤録の保存期間を5年間とし、保存期間の不整合を解消すべきとしている。

(2025年2月12日時点の情報に基づき作成)



参考情報
厚生労働省 令和7年1月10日 厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会

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