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2025/5/30 17:00
2024年度改定検証 リフィル処方は「患者希望」、一般名処方は「標準型電子カルテ」がカギに
「リフィル処方箋」と「バイオ後続品」の今後の普及に向けては患者への周知徹底が課題であることが、2024年度診療報酬改定の結果検証調査で分かった。診療所での一般名処方の促進には「標準型電子カルテ」の普及に期待がかかる。
リフィル処方箋は「患者希望あれば検討」
結果検証調査によれば、医療機関のリフィル処方箋の発行割合(全処方箋に占めるリフィル処方箋の割合)は、22年7月が0.04%、23年7月が0.05%で、24年7月でも0.07%―。22年度診療報酬改定で導入されたが、依然として低い発行水準にとどまっている。今後の発行見通しとしては、発行実績がある病院、発行実績がない病院、発行実績がある診療所では「患者希望があれば検討する」が最も多く、5~7割となっていた。
リフィル処方箋は、病院の40.6%、診療所の53.6%に発行経験があり、病院医師では19.0%、診療所医師では58.0%。リフィル処方箋の発行経験がない医師に発行しなかった理由を確認した結果では、「長期処方で対応が可能だったから」が最多だが(病院57.1%、診療所59.6%)、「患者からの求めがないから」も次いで多かった(同56.6%、48.3%)。
一方で、患者側の利用意向は高い。今後、病状が安定している場合に「利用したい」(利用したい+どちらかと言えば利用したい)との回答割合は郵送調査で60.3%、インターネット調査で66.1%に上った。ただし、認知度として、制度の内容まで知っていた割合は郵送調査で33.2%、インターネット調査ではわずか6.1%。今後の周知徹底により患者側の理解が進み、「希望」が増えてくれば、普及が加速することも考えられる。
リフィル処方箋は、症状が安定している患者について、医師の判断により、医師および薬剤師の適切な連携のもと、一定期間内に処方箋を反復利用することができる仕組み。そのメリットとして、患者は受診回数や通院時間、診察の待ち時間を減らすことができ、診察費や交通費の負担軽減にもつながる。個々の医療費の節約は、社会全体で使われる医療費の総額の抑制にも貢献することから、政策的に推進されている。
診療所の一般名処方件数が増加、「一般名処方加算」の引き上げで
加算新設でバイオ後続品使用増の病院が2割
後発医薬品の使用促進に関しては、一般名処方による処方箋発行があるのは診療所の78.8%、病院の73.4%。「発行あり」と回答した診療所では、43.8%で1年前と比較して「一般名処方加算」の算定回数が増えており、その理由では「(24年度改定で)点数が引き上げられたから」が34.2%で最も多く、インセンティブとなっていた。次いで「先発医薬品を希望する患者が減ったから」の26.5%、「一般名処方に対応できる院内体制が整備されたから」の25.6%などだった。これに対して一般名処方の件数が前年から変わらない、または減った診療所の理由では、「後発医薬品の安定供給への不安があるから」(27.9%)が最も多かった。また、診療所で一般名処方による処方箋発行がない理由では、「オーダリングシステムや電子カルテが未導入であるため」が28.1%で最も多かった。現在、国主導で開発が進められている「標準型電子カルテ」が安価で提供されるようになれば、課題解消が期待できそうだ。
一方、患者調査の結果によると、長期収載品の使用の選定療養化を「知っていた」割合は、郵送調査が67.9%、インターネット調査が31.9%だった。先発医薬品を選択して特別の料金を払った経験がある人に、後発医薬品に切り替える特別の料金の水準を聞くと、郵送調査は「いくらであろうと先発医薬品を選択する」(28.3%)、ネット調査は「現在の2倍程度になる場合」(32.0%)がそれぞれ最も多い結果となった。
さらにバイオ後続品については、病院でバイオ医薬品(先行バイオ医薬品・バイオ後続品)の処方(使用)がある場合のバイオ後続品の院内処方(入院または院内の外来)は96.4%が、院外処方は75.4%が「あり」と回答。「あり」の病院に対し、そのいずれかで「バイオ後続品導入初期加算」が24年度改定で新設されたことによりバイオ後続品の使用件数が増えたかを尋ねたところ、「増えた」が19.2%となっていた。ただし、バイオ後続品を「知っている」患者は郵送調査で18.9%、インターネット調査で8.9%と認知度は低く、こちらも周知が課題となる。
「これまでの改定とは相当異なる状況」に対応
こうした24年度改定の検証結果の報告も含め、中央社会保険医療協議会・総会では26年度改定に向けた検討を進めていく。そのスケジュールについて、従来であれば、改定前年の春から夏にかけて総論的な議論を行い、秋から個別具体的な議論に移るが、今回は現下の医療機関を取り巻く状況を踏まえ、まずは7月までにその議論を行う。厚生労働省保険局医療課の林修一郎課長は「物価や賃金、医療機関経営など、これまでの改定とは相当異なる状況にある」と理由を説明している。
7月からは従来のスケジュールに戻り、9月半ばまで総論(その1シリーズ)、続いて各論(その2以降シリーズ)の議論を進める。並行して専門部会・小委員会などでの審議も従来どおりのスケジュールで進めるが、診療報酬調査専門組織の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」や医療技術評価分科会からの審議報告については、効率的に議論を進める観点から、総会前の診療報酬基本問題小委員会への報告を省き、総会に直接報告する運用に改める。改定の答申は従来どおり26年2月中を予定している。(資料1)
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第606回 4/9)《厚生労働省》を編集
医療機関は物価や人件費の高騰に伴うコスト増で経営がひっ迫しており、特に「病院経営はこれまでに経験のない極めて厳しい状況に置かれている」として、病院団体は診療報酬が物価や人件費の高騰に適切に対応する仕組みの導入を強く訴えている。2年に1度の改定では物価・人件費高騰のスピードに対応できないため、病院経営が悪化しており、医療提供サービスの質が低下するリスクが高いとし、コスト上昇に迅速に対応できる診療報酬上の新たな仕組みとして自動調整システムや加算制度などの導入を要望している。
(2025年4月23日時点の情報に基づき作成)
参考情報
厚生労働省 中央社会保険医療協議会 診療報酬改定結果検証部会(第72回)
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長期処方及びリフィル処方箋の実施状況調査報告書(案)<概要>
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令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の報告書案について
長期処方及びリフィル処方箋の実施状況調査
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後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査報告書(案)<概要>
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令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の報告案について
後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査
厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第606回)
詳しくはこちら※上記内容は確定事項ではなく、今後の議論で修正や見送りになる可能性がある点にご留意ください。
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