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2025/6/24 17:00
経済・物価動向等の影響による社会保障関係費の伸び容認へ 政府が「骨太の方針2025」を閣議決定
政府は6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太の方針2025)を閣議決定した。社会保障関係費について、従来からの高齢化による増加分に加え、経済・物価動向等の影響による増加分も容認する方針を明示。原案を修正し、新たな地域医療構想に向けた病床削減の推進を追記したほか、OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し、地域フォーミュラリの全国展開-などへの取り組み姿勢をより強く打ち出した。
社会保障関係費についてはこれまで、伸びの範囲を高齢化による増加分に抑制する政策がとられてきた。今後の予算編成における考え方について骨太の方針は、「これまでの改革を通じた保険料負担の抑制努力も継続しつつ、25年春季労使交渉における力強い賃上げの実現や昨今の物価上昇による影響等について、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げにつながるよう、的確な対応を行う」と記載。その上で、「高齢化による増加分に相当する伸びにこうした経済・物価動向も踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と明記した。
全世代型社会保障の構築に向けた対応では、(1)OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し、(2)地域フォーミュラリの全国展開、(3)新たな地域医療構想に向けた病床削減、(4)現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底―などを通じた国民負担の軽減を目標に提示。25年末までの予算編成過程で十分な検討を行い、早期実現が可能なものは26年度から実行すると書き込んだ。
(1)OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し
OTC類似薬の保険給付のあり方の見直しは、国民皆保険制度の持続可能性を確保しつつ、国民の医療費負担を軽減するための重要な施策である。これにより、医療機関における不必要な受診を抑制し、軽微な症状や慢性疾患の安定期においては、患者自身がドラッグストア等で購入可能なOTC医薬品(一般用医薬品)を活用する「セルフメディケーション」を一層推進する。特に、こどもや慢性疾患を抱える方、低所得の方々の患者負担には十分配慮しつつ、個別の品目について適正使用の観点から検討を進める。これにより、医療資源の効率的な配分を促し、本当に医療が必要な人々に質の高い医療が提供される体制を強化する。さらに、医薬品や検査薬のスイッチOTC化を促進し、国民が主体的に自身の健康管理を行う環境整備を進める。
(2)地域フォーミュラリの全国展開
地域フォーミュラリの全国展開は、地域の実情に応じた医療の最適化と効率化を図る上で不可欠な取り組みである。これは、地域内の医療機関が連携し、標準的かつ効果的な医薬品の使用指針を策定することで、不必要な重複投薬や高額な医薬品の使用を抑制し、医療費の適正化を目指すものである。フォーミュラリの普及推進策を検討し、各地域において地域フォーミュラリが策定されるよう、国として強力に支援する。これにより、地域全体で医薬品の適正使用が促進され、患者にとっても費用対効果の高い医療が提供されることに繋がる。また、医療提供者間の情報共有と連携を深め、地域医療連携の質の向上にも貢献する。
(3)新たな地域医療構想に向けた病床削減
新たな地域医療構想に向けた病床削減は、自民・公明・日本維新の会の三党合意を踏まえたもので、「人口減少等により不要となると推定される一般病床・療養病床・精神病床といった病床について、地域の実情を踏まえた調査を行った上で、2年後の新たな地域医療構想に向けて、不可逆的な措置を講じつつ、調査を踏まえて次の地域医療構想までに削減を図る」と記載。医療提供体制の最適化は、質の高い医療を持続的に提供するために不可欠であり、地域医療構想の推進は、今後の人口構造の変化に対応し、医療資源の効率的な配分を実現するものである。
(4)現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底
現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底は、全世代型社会保障制度の公平性と持続可能性を高めるための根幹となる改革である。骨太の方針では、医療・介護保険における負担への金融所得の反映に向けて、具体的な制度設計を進めるとした。税制における金融所得に係る法定調書の現状も踏まえつつ、マイナンバーの記載や情報提出のオンライン化等の課題、負担の公平性、関係者の事務負担等に留意しながら、具体的な制度設計を進める。これにより、所得に応じた公平な負担が実現し、現役世代の過重な負担を軽減するとともに、社会保障制度全体の安定化に寄与する。
個別政策では、▽医療機関、介護施設、障害福祉サービス等事業者の経営情報のさらなる見える化▽介護保険制度における利用者負担の判断基準の見直し等の給付と負担の見直しについて25年度末までに結論を得られるように検討▽かかりつけ医機能の発揮される制度整備▽リフィル処方箋の普及・定着▽保険外併用療養費制度の対象範囲拡大▽薬剤自己負担の見直し-などが盛り込まれた。
(2025年6月13日時点の情報に基づき作成)
参考情報
内閣府 経済財政運営と改革の基本方針2025
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