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2025/9/24 15:00
調剤報酬改定に関する議論を開始 中医協・総会
各側委員が薬剤師の薬局・病院間偏在の是正に強い問題意識
中央社会保険医療協議会・総会は9月10日、2026年度診療報酬改定における調剤報酬の見直しについて、議論を開始した。この中で診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、地域医療を支える薬局の経営維持や着実な賃上げを可能とするための評価の充実を要請。また、病院・薬局間の薬剤師の偏在が解消しない現状に各側の委員が問題意識を示した。
調剤報酬の初回となったこの日は、薬剤師や薬局を取り巻く現状を整理したデータなどをもとに総論的な議論を行った。
それによると、届出薬剤師数は増加傾向にあり、薬局薬剤師数は右肩上がりでの増加が続いているが、病院薬剤師数は概ね横ばいで推移。薬剤師の充足状況を示す偏在指標は、薬局薬剤師では18都道府県で目標値の1.0を超えたが、病院薬剤師で1.0を超える都道府県はなかった(資料1)。
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第616回 9/10)《厚生労働省》を編集
22年度診療報酬改定では「調剤料」の一部を「薬学管理料」に再編する評価体系の見直しが行われた。この見直し後は技術料の約5割を薬学管理料が占めるようになり、対物業務から対人業務へのシフトが進んでいることがうかがえた。調剤報酬の算定状況をみると、22年度改定で新設された「調剤管理料」の算定回数や総額は、調剤日数の区分が大きいほど多く、29日分以上の区分が最多となった。
「かかりつけ薬剤師指導料」等の全処方箋に占める算定割合は約1.8%
「かかりつけ薬剤師指導料」と「かかりつけ薬剤師包括管理料」の算定回数・届出薬局数は増加傾向にあるが、全処方箋の受付回数に占める割合は約1.8%にとどまる。「調剤基本料」別の「かかりつけ薬剤師指導料」の算定状況では、大型チェーン薬局が対象の「調剤基本料3ロ、ハ」や敷地内薬局が対象の「特別調剤基本料A」の届出薬局の算定割合が高くなっていた(資料2)。
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第616回 9/10)《厚生労働省》を編集
薬局の体制を評価する「地域支援体制加算」は38.4%の薬局が4つある区分のいずれかを届出ており、「調剤基本料1」の薬局の届出割合は約4割、それ以外の薬局は約3割だった。
「後発医薬品調剤体制加算」の算定回数は増加傾向にあり、特に最も高い基準の「加算3」(後発医薬品の使用割合90%以上)で算定回数・届出薬局数が増加した。
こうした現状を踏まえ、厚生労働省は▽地域の医薬品供給拠点の役割を一層充実する観点での調剤技術料(「調剤基本料」、「地域支援体制加算」、「後発医薬品調剤体制加算」等)の評価のあり方▽対人業務を拡充する観点での薬学管理料(「調剤管理料」、「かかりつけ薬剤師指導料」等)の評価のあり方―の2項目を論点として提示した。
調剤基本料とその加算による薬局の基本機能の下支えが必須 森委員
議論で診療側の森委員は、近年の物価や人件費の高騰、毎年薬価改定の影響などで薬局の経営は危機的状況にあると強調。診療報酬上の対応策では、「いわゆるファーマシーフィーである調剤基本料とその加算によって薬局の基本機能を下支えすることが重要だ」とし、着実な賃上げの実現のためにも「調剤基本料」の評価充実が不可欠との認識を示した。
池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は薬剤師の病院・薬局間偏在について、「由々しき状況にある」と強い問題意識を示し、地域偏在の是正とともに早急に対応策を講じるべきだと指摘した。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)もこの問題に言及し、「薬剤師を薬局から病院へシフトさせるために医科の報酬だけでなく、調剤報酬で何ができるかも検討すべきだ」と述べた。
(2025年9月10日時点の情報に基づき作成)
参考情報
厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第616回)
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