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2025/12/16 17:00
「処方箋料」の引き下げ求める支払側に診療側が反発 中医協・総会
後発医薬品使用に関する体制加算の存廃でも各側が対立
中央社会保険医療協議会・総会は12月5日、後発医薬品やバイオ後続品の使用体制について議論した。この中で支払側は、後発医薬品の使用に対する体制加算(「外来後発医薬品使用体制加算」等)の廃止や「処方箋料」の引き下げを提案。反対する診療側と意見が激しく対立した。
厚生労働省は後発医薬品の使用や供給を巡る課題として、▽薬局や病院では先発医薬品に加え後発医薬品の在庫も相当量を抱えることによる追加的コストが生じている▽後発医薬品の供給状況の悪化により現場の業務負担が増大している▽「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン(以下、流通改善GL)」は、薬局を含む流通関係者が取り組むべき適正な在庫確保や配送、返品に関する規定があるが、薬局の認知度は低い―ことなどを提示。
流通改善GL等を踏まえた在庫管理体制などに対する評価が論点に
その上で、流通改善GL等を踏まえ、多くの医薬品を在庫管理する体制を含めた報酬上の評価のあり方の検討を総会に求めた。
現行の後発医薬品関連の体制加算には、医科の「外来後発医薬品使用体制加算」や調剤の「後発医薬品調剤体制加算」などがある。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、改めてこれら加算の廃止と減算ルールへの転換を要望。鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)も、「後発医薬品の使用は患者にとっても医療機関にとっても当然のこととして受け入れられたフェーズに至っており、使用状況に応じた加算という方法は馴染まなくなった」と同調した。
これに対して診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、後発医薬品の使用に関する体制加算は、「後発医薬品の使用促進だけでなく、使用の維持、安定供給に対応する薬局・医療機関を支える大きな役割を持っており、単純に廃止すべきではない」と反論。江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は流通改善GLの遵守について、「現場は毎日綱渡りで医薬品を確保しているような状況にあり、まずはGLを周知していく段階にあると考える」と述べ、要件化を検討すべき段階にはないと牽制した。
支払側の「処方箋料」の引き下げ要望、診療側は「全くの論外」
後発医薬品の使用促進に向けた対応では、「処方箋料」や「一般名処方加算」の評価のあり方が論点となった。「処方箋料」については2024年度診療報酬改定の際に大幅な引き下げが実施されている(資料1)。
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第633回 12/5)《厚生労働省》を編集
支払側の松本委員は医薬分業の進展などを踏まえ、「インセンティブとして処方箋料を高くする時代が終わったことは明白だ」とし、再度の「処方箋料」引き下げを主張。「一般名処方加算」については、「仮に残すのであれば電子カルテシステム等が導入されれば一般名で処方し、銘柄は薬局が判断することが基本となるように『一般名処方加算』を組み替えることも必要だ」と述べた。
これに診療側の江澤委員は強く反発。「医薬品の供給が不安定な中で医師が処方箋を出すことについても、これまでにない負担が生じている」と訴え、「『処方箋料』を引き下げるという議論は現場の実態を踏まえておらず、全くの論外。『一般名処方加算』ともどもしっかりとした評価が必要だ」と、むしろ手厚く評価すべきとの見解を示した。
バイオ医薬品を「一般名処方加算」の対象に追加へ
一方、バイオ後続品では、▽使用促進のためバイオ医薬品に係る一般名処方マスタの掲載を検討するとともに、バイオ医薬品も「一般名処方加算」の対象とする▽バイオ後続品を取り扱う薬局の体制を新たに評価する▽バイオ後続品の品質や有効性、安全性等の患者への説明を新たに評価する―ことなどが論点として提示され、いずれにも反対意見はなかった。
(2025年12月5日時点の情報に基づき作成)
参考情報
厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第633回)
※上記内容は確定事項ではなく、今後の議論で修正や見送りになる可能性がある点にご留意ください。
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