国内医療・薬事情報
退院後の処方の先祖返り、中止理由なども情報共有を
2025年04月07日 15:20
切れ目のないポリファーマシー対策 ガイド公表
国立長寿医療研究センターは、病院薬剤師向けに作成した「切れ目のないポリファーマシー対策を提供するための薬物療法情報提供書作成ガイド」を公表した。主に高齢患者の入退院に伴って服薬に関する情報が寸断され、「処方の先祖返り」などが生じていると指摘。入院時に中止した薬剤については、中止理由や経緯などについて具体的に情報提供することで、健康被害の発生や漫然投与を防ぐ必要があるとしている。
入院時に服薬を中止した薬が退院後に再開される「処方の先祖返り」について、ガイドでは胃酸の分泌抑制や鎮痛作用など幅広い用途で使用される抗コリン薬のケースを例示した。
抗コリン薬は副作用として、認知機能の低下が見られる。複数の疾患を抱えることが少なくない高齢者では、複数の抗コリン薬を服用することも多く、重積により薬剤性認知症が引き起こされる問題が指摘されている。
ガイドではこうした抗コリン薬について、認知機能低下の懸念などから入院中に服用の中止や変更を行い、退院後も処方すべきでないとした場合には、薬物療法情報提供書にその理由や経緯を具体的に記載することとした。
一方、ガイドでは睡眠導入薬やNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)など入院中に開始した薬が、退院後も漫然と継続されているケースもあると指摘。服用を開始した経緯とともに、中止が望ましい場合にはその理由や中止時期などについて退院後のフォローアップを行う医療機関などに情報提供する必要があるとした。
■ポリファーマシー対策に必要な周辺情報、「ほとんど共有されていない」
脳梗塞をはじめとする急性期疾患では、入院前に比べて嚥下能力や認知機能の低下が見られるケースもある。そのため退院後の処方では、誤嚥性肺炎のリスクを考慮した適切な剤型選択や、患者の服薬管理能力、家族の支援状況を踏まえた服用回数・薬剤数などの見直しが必要になるケースもあると解説。患者の病態と変更理由などを添えて情報提供することで、安全な薬物療法の継続が可能になるとしている。
ガイドでは、病院薬剤師からの情報提供は薬剤の使用に関する情報に限定されることが多く、ポリファーマシーの見直しに必要な認知機能や日常生活活動、社会的背景など薬物療法を取り巻く周辺の情報の共有が「ほとんど行われていない」と指摘。
国立長寿医療研究センターは今回のガイドの作成により、情報提供書で共有する事項の統一や情報共有の仕組みの構築を促し、切れ目のないポリファーマシー対策の推進につながることを期待したいとしている。
【記事提供:株式会社CBホールディングス(CBnews)】
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