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血中ビタミンD量不足でサルコペニア罹患率上昇も

国立長寿医療研究センターが研究成果を公表

 国立研究開発法人国立長寿医療研究センターはこのほど、同センター運動器疾患研究部の細山徹副部長らの研究グループが、血中ビタミンD量が不足している人は将来的なサルコペニア罹患率が上昇することや、筋線維内ビタミンDシグナル伝達の低下が筋力低下と直接的に関連していることなどを、老化に関する長期縦断疫学研究の解析などで明らかにしたと発表した。今回の研究の成果は、血中ビタミンD量がサルコペニア発症の予測バイオマーカーの1つとなり得ることを示しているという。

 サルコペニアは、加齢に伴って生じる骨格筋減弱症で、その対策は超高齢社会を迎えた日本で喫緊の課題となっている。しかし、サルコペニアの発症や増悪化の分子機構
は不明で、診断や発症予測に有用な分子マーカー(バイオマーカー)の同定にも至っていない。

 ビタミンDは体で生合成される脂溶性のビタミンで、先行研究では加齢性の量的変動やサルコペニアとの関連性が指摘されてきた。しかし、先行研究の成果の多くが培養細胞を用いた実験や横断的な疫学研究から得られたもので、成熟した骨格筋に対するビタミンDの作用や加齢性疾患のサルコペニアとの関連性を示す科学的根拠が十分に提示されたとは言い難い状況だった。

 研究グループは、血中ビタミンD量が低い値の人の4年後の筋力変化や筋量変化や、新規サルコペニア発生数などについて検討。ビタミンD欠乏群と充足群の比較解析から、ビタミンD欠乏群では筋力低下が進行していることや、サルコペニアの新規発生数も有意に増加することを見い出した。このことは「ビタミンD欠乏が将来的な筋力低下を導き、結果としてサルコペニア罹患率が上昇すること」を示唆しているという。研究の成果は、老年学分野の国際専門誌「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に掲載された。

【執筆提供:株式会社CBホールディングス(CBnews)】
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