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ケタミン即効性抗うつ作用、新たなメカニズム解明

金沢大が研究の成果を発表

金沢大はこのほど、同大医薬保健研究域薬学系の出山諭司准教授と金田勝幸教授、大阪公立大大学院医学研究科脳神経機能形態学の近藤誠教授らの共同研究グループが、ケタミンの即効性抗うつ作用に関わる新しいメカニズムを解明したと発表した。

 うつ病の患者数は、世界で約2.8億人と言われ,深刻な社会経済的損失をもたらしている。しかし、現在うつ病の治療に用いられる抗うつ薬は効果発現が遅く、3分の1以上の患者は治療抵抗性であることが問題となっている。2000年代の臨床研究で、全身麻酔薬として古くから用いられているケタミンが、麻酔用量よりも低用量で治療抵抗性うつ病患者に対して即効性の抗うつ作用をもたらすことが明らかとなっている。

 ケタミンには依存性や精神症状(幻覚、妄想など)といった重大な副作用があり、ケタミン自体の臨床応用には大きな問題が伴うため、不明な点が多いケタミンの作用メカニズムの解明によって、有効性が高く、かつ副作用の小さい治療薬の開発につなげることが期待されている。

 研究グループは、マウスの脳を解析し、ケタミンを投与すると、内側前頭前野(mPFC)でインスリン様成長因子-1(IGF-1)の遊離が持続的に増加し、このIGF-1がケタミンの抗うつ作用の発現に重要な役割を果たしていることを、世界で初めて発見した。この研究により、IGF-1の役割が明らかとなったことで、将来、IGF-1を標的とした、ケタミンよりも安全性の高い新しい抗うつ薬の開発につながることが期待されるという。研究の成果は、米国オンライン科学誌「Translational Psychiatry」に掲載された。

【執筆提供:株式会社CBホールディングス(CBnews)】
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